制御盤とは装置、機械、設備等の動力を制御する装置です。商業施設や工場、住宅などさまざまな場所に設置されています。主にモーターやバルブなどを制御し、制御回路、電源回路、信号回路等で構成されます。
この記事では、制御盤の設計・製作に必要な工程やノウハウ、海外規格に対応する方法、製作会社を選ぶ際のポイントについて、豊富な経験を持つフルハートジャパンが解説します。
制御盤の製作とは
制御盤の製作では、その形や大きさ、内部の配線や部品の配置などを設計し、板金加工や組立、試験などを行います。仕様書に基づいた正確な作業が求められ、また、制御盤の小型化や海外規格への対応など、技術的な課題への対応も可能です。
制御盤の機能
制御盤には、下記のような機能があります。
機能 | 部品 | 説明 |
電源供給 | トランス、ブレーカー、リレー | 制御盤は外部から電源を受け取り、機械や設備に必要な電圧や電流に変換して供給する |
信号処理 | コントローラー、タイマー、センサー | 制御盤は機械や設備から送られてくる信号を受け取り、処理して出力する |
保護 | ヒューズ、遮断器、サージプロテクター | 電流の過負荷や短絡などが発生した場合に回路を自動遮断 |
制御 | 制御回路、コントローラー、タイマー | モーターの回転数やバルブの開閉など、機械や設備を制御 |
センサー連携 | センサー | センサーからの信号を受け取って機械の動作を制御 |
モニタリング | モニター | 機械や設備の状態をモニタリングし、異常を検知した場合に適切なアラートを発する |
通信 | 通信モジュール | 制御盤と上位システムや他の機器とデータのやりとりが可能。遠隔地から制御盤の操作もできる |
制御盤の製作工程の流れ・手順
制御盤の製作には、下記に挙げた4つの工程があります。
- 設計
- 板金
- 組立・配線
- 試験・出荷
それぞれの工程について、見ていきましょう。
設計
制御盤の製作には、まずお客様から要求仕様をうかがいます。要求仕様とは、制御盤がどのような機能や性能を持ち、どのような環境で使用されるかなどを示したものです。
たとえば、要求仕様に基づいて下記の制御盤の設計を行います。
- 制御盤に必要な電子部品や配線材を選定
- 制御盤のサイズや形状の決定
- 板金図や回路図、配線図などの図面を作成
これらの図面は、制御盤の製作に必要な情報を示すものであり、後の工程で重要な役割を果たします。
また、設計では制御盤の用途に応じて、さまざまな規格や法令に準拠させることも必要です。たとえば、海外で使用される場合は、その国や地域の電気安全規格にあわせる必要があります。
板金
次に部品を調達し、制御盤の箱となる金属板を加工する板金製作に着手します。板金製作では、図面に沿って金属板を切断したり、曲げたり、穴あけしたりします。また、塗装や表面処理も板金に含めて実施します。
塗装や表面処理は、制御盤の外観や耐久性を向上させるために大切な工程です。弊社では、板金製作および塗装をグループ会社である株式会社ハーベストジャパンにて行っています。
組立・配線
次に、制御盤内に部品を配置し配線作業を行います。組立では、図面に示された位置や方向に注意し、制御盤内に電子部品や回路基板などの部品を取り付けます。
配線では、図面に示された色や太さや長さに注意しながら制御盤内で部品同士を電気的につなぎ、配線材を引き回します。また、ノイズが乗らないように配線の引回しは交流(AC)と直流(DC)をわけて配線する配慮が大切です。
試験・出荷
最後に、制御盤が正しく動作するかを確認する検査を行います。
テスト | 説明 |
外観検査 | 制御盤の外観に傷や汚れがないかを確認する |
導通検査 | 制御盤内の配線が正しくつながっているかを確認する |
ビスの増し締め | 制御盤内の部品がしっかり固定されているかを確認する |
その上で、保護機能のテスト、センサーとの連携テストなどを行い、制御盤が完成します。完成した制御盤は、お客様に出荷します。このように、制御盤の製作は、さまざまな知識や技術が必要な作業です。
製作にかかる費用・価格はお見積もりから
制御盤の製作にかかる費用は、一般的に数十万円から数百万円程度になることが多くあります。制御盤の製作には、設計から組立、検査、納品までの工程が必要です。そのため、制御盤の製作費用は、下記のような要因によって変わります。
費用 | 内容 |
---|---|
設計費用 | 仕様書や回路図などの設計図を作成するための費用 |
板金・加工費用 | 制御盤の箱となる金属板の加工や部品の設置、配線の作業などの費用 |
部品費用 | 制御盤に使用する各種部品の費用 |
追加料金 | 納期が短い場合や急ぎで製作する場合に発生する追加費用 |
現地据付工事費用 | 制御盤を設置する現地での工事費用 |
運送費用 | 制御盤を輸送するための費用 |
保守・修理費用 | 制御盤の保守や修理に必要な費用 |
アフターサービスの費用 | 製作会社が提供するアフターサービスに必要な費用 |
このように、設計の有無、制御盤の大きさや構成、機能、部品の種類や数、納期などによって大きく異なります。たとえば、制御回路や入出力端子、各種センサーを多数搭載する場合など、制御盤の構成や機能によっては製作費用が高くなります。
見積もりを依頼する際には、設備や機器の詳細な仕様や要望を伝えると良いでしょう。
弊社では、長年の経験と実績を持つスタッフが、お客様のニーズに応える制御盤を製作いたします。制御盤の製作に関するご相談やお見積りは、お気軽にお問い合わせください。
制御盤の製作に欠かせない製作仕様書・設計
製作仕様書は、製作する制御盤の機能・性能や使用部品の指定など設計について細かく決める書類です。お客様と製作会社の間で十分な打ち合わせを行い、仕様を明確にした設計が製品の品質向上や納期の短縮につながります。
制御盤の製作仕様書には、下記のような項目が含まれます。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 製作する制御盤の名称、形状、寸法、機能のほか、制御対象の装置や機器などの説明 |
材料・部品 | 使用する材料・部品の種類、規格、厚さ、品番、数量、表面処理などの情報 |
図面 | 制御盤の外観図、内部配線図、制御回路図、部品配置図、板金加工図など |
機能・性能 | 制御盤および制御する装置や機器の機能、制御盤の動作条件、制御方法、信号電圧、周波数、最大負荷などの情報 |
試験項目 | 制御盤の試験に関する項目、試験方法、試験条件、合格基準などの情報 |
保守・点検 | 制御盤の通常時の保守・点検や、故障対応などの情報 |
納期 | 制御盤の製作期間、工程スケジュールなどの情報 |
制御盤の製作仕様書のポイント
製作仕様書を作成する際には、下記のポイントに注意しましょう。
- 用途や目的を明確にする
- 外形寸法や重量を決める
- 電気的・機械的・環境的条件を定める
- 安全性や信頼性を確保する
制御盤がどのような設備や機械を制御するのか、どのような機能や性能が求められるのかを具体的に記述し、設置される場所や環境に合わせて、適切なサイズや重さを決定します。小型化や軽量化が求められる場合は、部品選定やレイアウトに工夫が必要です。
また、制御盤が正常に動作するために必要な電圧や電流、温度や湿度、振動や衝撃などの条件も必要です(海外で使用される場合は、海外規格に準拠する)。必要に応じて、保護装置や接地装置、絶縁材料などを適切に選択し、故障時の対処方法や保守点検方法も決めておくと安心です。
制御盤の設計のポイント
制御盤設計のポイントは、コストと品質のバランスです。そのため、設計段階から原価低減や製造コスト削減を考える「コストダウン設計」が大切です。
コストダウン設計では、下記のようなことに注意します。
材料・部品選定 | 図面作成 | 試験・検査 |
---|---|---|
必要十分な性能を持つ材料・部品を選ぶ | 規格や記号を統一する | 項目や方法を明確にする |
汎用性が高く入手しやすい材料・部品を選ぶ | 内容や精度を確認する | 効率や精度を向上させる |
材料・部品の廃棄や在庫を減らす | 修正や変更を最小限にする | 結果や記録を管理する |
また、コストと品質のバランスに加えて、制御盤設計では「小型化」と「海外規格への対応」が求められます。いずれもお客様のニーズが高い項目で、制御盤製作会社の経験とデータの蓄積が生きる分野です
何に使う?制御盤の設計・製作で解決できる課題
自社で制御盤の設計・製作を行うと、下記のような課題に直面しやすくなります。
- 仕様書が不十分で、設計や製作に手間がかかる
- サイズや形状が限られており、設備に合わせた小型化やカスタマイズが難しい
- 品質や安全性が保証されておらず、故障やトラブルのリスクが高い
- 海外規格に対応していなくて、輸出や現地での使用ができない
これらの課題を解決するためには、制御盤の設計・製作を専門業者への依頼がおすすめです。
制御盤の仕様書が不十分でも対応可能
まず、専門業者では制御盤の仕様書が不十分でも対応可能です。制御盤の設計・製作だけでなく、設備や制御システムに関する知識も豊富に持っているため、柔軟にご提案から修正まで対応できます。
お客様から提供された仕様書だけでなく、設備や用途に応じた最適な制御盤まで提案できます。また、仕様書に不明な点や矛盾点があっても、連携しながら迅速に解決できるのもメリットです。
制御盤の小型化やカスタマイズが容易
また、制御盤の小型化やカスタマイズが容易なこともポイントです。設備や機械の主役はお客様の装置であり、制御盤は脇役として小型・省スペースであることが求められます。
多数の装置で構成する大型プラントでは、特に1つひとつの装置・制御盤に対して厳しい小型化要求が行われます。そのため、制御盤のサイズや形状をお客様のご要望に合わせて自由に変更できることが大切です。
- 設備のスペースに合わせて、制御盤の高さや幅を調整する
- 設備の動作に必要な機能だけを搭載して、制御盤の重量やコストを削減する
- 設備の操作性や見やすさを向上させるために、制御盤のデザインや色を変更する
フルハートジャパンでは、長い経験から制御盤を小型化するノウハウを蓄積しています。
- 使用する電源、PLCなどの電気部品はパッケージが小さいものを選ぶ
- 最も小型化の効果が大きい部品の配置や配線を最適化する
- 制御盤内の配線のスペースを節約して制御盤のサイズを小さくする
また、全体でハーネスの使用量を減らすことは、工数削減にもつながります。
加えて、冷却方式の最適化も有効です。設置場所の環境や制御盤の仕様にあったファンやヒートシンク、あるいは盤クーラー(HASHIBA電子クーラー)などの冷却部品を適切に選択し、制御盤のサイズを小さくするなども実現できます。
制御盤の品質や安全性が保証される
さらに、制御盤の品質や安全性も利点となります。制御盤の設計・製作において、厳しい品質管理や安全基準を遵守できるため、耐久性や信頼性が高く、故障やトラブルのリスクが低いものが完成します。
また、制御盤の設計・製作後にも、定期的な点検やメンテナンスを行えます。そのため、制御盤は、長期間にわたって安定した性能を発揮するでしょう。
制御盤の海外規格にも対応できる
意外に見逃せないのが、制御盤の海外規格に対応できることです。代表的な規格としては、CEマーキング(EU)、UL規格(米国)、CCC規格(中国)などがあります。
- UL規格やCEマーキングなどの国際的な認証を取得する
- 電圧や周波数などの電気的な条件に合わせて制御盤を調整する
- 言語や単位などの表示を変更する
それぞれの海外規格は安全対策や環境対策を目的として電源の仕様や配線、材料などを規定しています。UL規格のように特定の材料を指定し、他の材料が使えない規定も存在するため、それらを遵守するように材料を選定します。
そして、規格に基づいた試験や検査を実施し、必要に応じて認証機関による検査を受け、認証を取得します。設計に着手してから海外規格を調べるのでは、開発期間が長くなってしまいます。フルハートジャパンは世界の規格を熟知し、仕様書決定の段階で海外規格への対応を織り込んでいることも強みのひとつです。
制御盤製作における会社の選び方
制御盤製作における会社の選び方について、下記の3つの観点を紹介します。
- 海外規格に対応してくれるか
- コストダウン設計に対応しているか
- コンサルは受けられるか
設計・製作にあたっては初期コストの削減、ランニングコストの低減、装置の小型化、海外規格への対応などが必要で、ノウハウを蓄積した製作会社を選ぶことが有効です。
これらのポイントを押さえておけば、制御盤製作のパートナーとして信頼できる会社を見つけられます。ぜひ参考にしてください。
海外規格に対応してくれるか
海外規格に対応した制御盤を製作する場合には、ULやCEなどの認証が必要になります。海外規格について熟知し、取得できるように対応してくれる会社を選ぶことが大切です。品質や安全性にも信頼できると言えるでしょう。
コストダウン設計に対応しているか
制御盤製作には、板金や電子部品などの材料費や人件費がかかります。そのため、コストダウン設計に対応している会社を選ぶことが重要です。
- 板金の厚さや形状を工夫して小型化する
- 電子部品の種類や配置を最適化する
- 配線や接続部分を簡素化する
などの方法があります。コストダウン設計に対応している会社は、効率や性能にも優れています。
コンサルは受けられるか
制御盤製作には、設備の種類や用途に応じてさまざまな要求があります。そのため、制御盤の設計や施工に関するアドバイスや提案などのコンサルが受けられるかどうかも会社の選び方のひとつです。
- 設備の動作条件や目的をヒアリングする
- 制御盤の仕様書や図面を作成する
- 制御盤の試運転や保守管理をサポートする
このようなコンサルが受けられる会社は、ニーズや課題にも対応でき、柔軟に依頼できるでしょう。
【補足】制御盤がなくなる未来はあるのか
機械や装置が世界から消えることはありませんし、その隣にある制御盤も消えることはないと考えられます。
ただし、制御盤がなくならないといっても、技術革新によって制御回路が小型化されて、その形や大きさは変わっていくでしょう。
さらに、設備の多様化や海外規格への対応によって要求される仕様が複雑化し、制御盤の設計や製作も変化していく未来も予想できます。環境やエネルギーの問題に対応した省エネやエコな設備が増え、IoTやAIなどの先進技術を活用したスマートな設備もさらに増加していきます。
また、欧州や米国などの海外市場に参入するためにCEやULなどの安全規格に準拠した制御盤が必要になっている現状もあります。制御盤がなくなる未来はありませんが、制御盤が進化していく未来はあります。
制御盤の製作を依頼する際には、こうした周辺知識にも敏感に対応できるところを選ぶことが大切です。
まとめ
制御盤は産業の分野でも生活の分野でも、さまざまな装置や機械を適切に動かす重要な役割を果たしています。その設計・製作にはさまざまなノウハウが必要で、小型化や海外規格への対応といったテーマに対応するには、制御盤製作に長い経験を持つ会社が有利です。
フルハートジャパンは50年を超える歴史の中で制御盤製作のノウハウを蓄積してきました。複雑な装置の仕様書決定に悩まれるお客様に、議論の叩き台をご提供し喜ばれるなど、経験を活かして製品開発を的確にサポートいたします。制御盤の製作は、ぜひフルハートジャパンにお問い合わせください!