メカトロとは、機械、電気、制御などの分野を統合して、効率的で機能的なシステムや製品を設計する手法です。いまや工業製品のほとんどがメカトロ製品と言ってもいいでしょう。
この記事では、メカトロ製品の概念や設計の基本、メリット、身近な例について解説します。
メカトロの意味とは?
メカトロとは、mechanics(機械)とelectronics(電気)を組み合わせた造語であるmechatronics(メカトロニクス)の略称です。機械工学、電気工学、制御工学などを統合した分野で、1970年代に注目されるようになりました。
メカトロの目的は、機械と電子を融合することで、高度な機能や性能を持つシステムや製品を開発することです。コンピュータの発展に伴って情報技術や制御技術を含めた総合的な技術となり、製品やシステムの機能性や性能を向上させるだけでなく、コスト削減や小型化なども実現する重要な技術となっています。
メカトロ設計のメリット
メカトロ設計は、機械の動作をソフトウェアで制御することでハードウェアだけでは実現できないような複雑な動きや精密な制御が可能になります。また、ハードウェアの部品数やサイズを減らし小型化や高速化を実現します。
また、ハードウェアの変更や追加が不要になり、開発や保守が容易になります。市場のニーズに応えるための柔軟性や拡張性を高めます。
メカトロ設計の身近な例
メカトロニクス設計は、いまやほとんどの工業製品に活用されています。機械だけで動く製品の方が珍しく、現代の機械のほとんどはメカトロニクスの考え方に基づいて作られています。
ここでは、メカトロニクスの例として、からくり人形とロボット、自動車の気化器とインジェクションを紹介します。
からくり人形とロボット
江戸時代のおもちゃである「からくり人形」をご存知でしょうか。有名な「茶運(ちゃくみ)人形」は、茶会の席でお客を喜ばせた「ロボットの元祖」。その仕組みは人形の内部にぜんまいばねやギア、カムなどのメカニズムを備え、人形の両手に茶碗を乗せると、その重みでお客のところまで進み始めます。お客が茶碗を取るとスイッチが切れ、飲み終えた茶碗を乗せると再びスイッチが入り、くるりと向きを変えて戻っていきます。もちろん電子制御は一切なく、機械(mechanics)だけで動くように工夫されています。
これに対して現代のロボットのおもちゃは、腕や足、関節は機械でできていますが、その動きは電気モーターやソフトウエアで制御しています。この機械(mechanics)と電気(electronics)の融合によって、前進・後退だけでなく右や左に向きを変えたり、顔の表情が変化したり、ダンスを踊るほどの複雑な動きを制御できるようになりました。これがメカトロニクスの強みです。
自動車の気化器とインジェクション
現代の自動車はメカトロニクスの塊です。自動車内部のあらゆるところで機械と電気の融合による制御が行われています。
例えば、エンジンにガソリンを供給する部分の仕組みを見てみましょう。1970年代までこの部分は気化器(キャブレター)と呼ばれていました。キャブレターの内部には空気の通り道を細く絞った部分があり、アクセルを踏み込むとここに吸い上げられたガソリンが加速された空気で霧状になってエンジンに送り込まれました。すべて機械(mechanics)だけで燃料を供給しています。
これに対して現代のガソリンエンジンでは、燃料は電子制御で供給する「インジェクション」となっています。電磁ポンプをコンピュータで制御し、アクセルの空き具合だけでなくエンジンの回転数や変速機のギア比、クルマの速度などに応じて最適な量(濃さ)のガソリンを供給します。これにより環境に左右されないスムーズな加速や、燃費の改善を実現しています。
メカトロ設計の流れ
メカトロ設計の流れは、下記のようになります。
過程 | 内容 |
---|---|
要求分析 | 機能や性能、コストや品質などの要求を明確に |
概念設計 | 製品の構成や動作原理、制御方法などを考える |
詳細設計 | 製品の各部分の詳細を決める |
試作・評価 | 製品を試作し、性能や品質を評価する |
改良・最適化 | 製品を改良・最適化する |
メカトロ設計は、機械、電気、情報など多くの分野の専門知識が必要な複雑な流れとなります。機械系では材料力学やCADなどの知識、電気・情報系では制御理論や回路設計、プログラミングの知識が求められます。設計の各過程ではそれぞれの専門家が協力して設計を進めます。
なかでも重要なのは、概念設計における「ハードとソフトの役割の切り分け」です。どこまでの動きや機能を機械(ハード)で実現し、どこからを電気(ソフト)で制御するのか、製品にどこまでの機能を持たせるのかという要求分析と合わせ、製品のコストを大きく左右します。
メカトロ設計はフルハートジャパンへ
メカトロ設計で重要なのは、ハードとソフトをどう役割分担し連携させるかにあります。良い設計のためにはハードとソフトの知識の融合が欠かせません。
フルハートジャパンは、社内に機械(ハード)の専門家と電気・制御(ソフト)の専門家が揃っており、メカトロ設計において高い技術力を発揮し豊富な経験と実績を持っています。設計から部品調達、加工、組立、現地設置まで一貫体制による対応で、お客様の多様なニーズに柔軟に応えます。
お客様からの細かい要望や仕様変更にも迅速に対応できます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
メカトロ設計は、機械、電気、制御などの分野を統合した手法であり、効率的で機能的なシステムや製品を設計できます。
メカトロ設計を組み込むことで、複雑な動きや小型化が可能になります。また、市場のニーズに応えるための柔軟性や拡張性も高めます。そのため、ビジネスにおいて競争力を高める手法としても有用です。
メカトロ設計に関するご相談があれば、機械と電気・制御の知識を併せ持つフルハートジャパンにぜひお問い合わせください。弊社では、一貫体制でのサービス提供により、お客様の多様なニーズに柔軟に応えいたします。