- プリント基板の設計方法を知りたい
- 回路設計と基板設計の違いについて理解したい
- 基板設計の標準やガイドラインを知りたい
とお考えではないでしょうか。プリント基板設計においては、回路図の作成、部品の選定と配置、配線パターンの作成、アートワークデータの出力などの工程があります。そのため、部品や配線のレイアウトを工夫することで、電子回路の性能や信頼性を高めることが大切です。
本記事では、プリント基板設計の目的、プロセス、および標準について説明します。
プリント基板とは?
プリント基板とは、電子部品を実装するための基板のことです。プリント基板には、部品を固定するための穴やパターンがあらかじめ作られており、部品同士を電気的に接続できます。
プリント基板の種類 | プリント基板の製造方法 |
一面配線基板 | エッチング法 |
両面配線基板 | 加工法 |
多層基板 | 積層法 |
プリント基板は、電子回路の機能や性能を実現するもので、非常に重要な役割を担います。
回路設計と基板設計の違い
回路設計とは、電子回路の仕様や機能、性能を実現するために、部品の種類や値、接続方法などを考える作業のことです。一方で基板設計とは、回路設計で決められた部品をプリント基板に配置し、パターンを引く作業のことです。
項目 | 回路設計 | 基板設計 |
目的 | 電子回路の仕様を満たすこと | プリント基板の製造や実装が可能であること |
使用ツール | 回路図やシミュレーション | CADソフト |
出力データ | 回路図や部品表など | アートワークやガーバーデータなど |
考慮すべき要素 | 回路の動作や特性 | 部品のサイズや形状、パターンの幅や間隔など |
基板設計は、回路設計の成果を実現する手段であり、連携しながら最適なプリント基板を設計することが求められます。
プリント基板の設計基準
プリント基板の設計基準には、以下のようなものがあります。
項目 | 内容 |
部品配置 | 部品間の距離や方向、部品同士の干渉や熱影響、部品の重心や強度、部品の取り付けや交換のしやすさ |
パターン配線 | パターン間の距離や方向、パターン幅や厚さ、パターン抵抗や容量、パターンノイズやクロストーク |
基板材料 | 基板厚さや層数、基板材料の種類や特性、基板耐熱温度や耐湿度、基板強度や剛性 |
これらの基準は、プリント基板の設計者が決める場合もあれば、製造業者やお客様からご提案をいただく場合もあります。プリント基板の設計者は、基準を遵守しながら最適なプリント基板の設計を行います。
プリント基板設計の目的
プリント基板設計の目的は、お客様の多様なニーズに対応して電子回路の性能や信頼性を高めることです。設計を行うことによって、その基板に求める性能、部品のサイズや形状、配線の長さや幅、層数や穴数などの要素を最適化します。
例えば、配線が長いと、外部からのノイズに対し弱くなります。また、部品が近くに詰まっていると、発熱により、回路の性能がでなくなることがあります。部品配置も重要となり、部品間の距離が近すぎると基板への実装(はんだ付け)ができません。
そのため、プリント基板を設計する際には、配線や部品の配置を考慮して、電気の流れを設計する必要があるでしょう。
プリント基板設計の流れ
プリント基板設計の流れは、下記のとおりです。
- 回路図の作成
- 部品の選定と配置
- 配線パターンの作成
- アートワークデータの出力
回路図の作成
まず、回路図を作成します。回路図とは、電子回路の構成や動作を表す図で、部品や接続点を記号で表し、配線は線で表します。作成する際には、回路設計者と連携し、回路の仕様や要求を確認することが大切です。
部品の選定と配置
次に、部品の選定と配置を行います。部品とは、電子回路において機能を果たす素子や器具を指します。例えば、抵抗やコンデンサー、トランジスターやICなどです。
一概に抵抗と言っても、足つき・足なしのもの、さまざまなサイズがあるため、部品の選定では回路図に基づいて部品の種類や値、サイズや形状などを決め、配置では信号の流れに沿ってプリント基板上に部品を並べる位置や向きを決めていく必要があリます。
部品の配置は、配線や実装に関する制約やルールに従い、CADソフトウェアを使ってドラッグ&ドロップで行います。
フルハートジャパンが神奈川大学様と共同開発したハイブリッドロケットに搭載する基板の部品選定では、軽量化のため部品サイズや重量に徹底的にこだわりました。また、低気圧に耐えるという条件も考慮して部品を選定しています。
配線パターンの作成
配線パターンとは、プリント基板上に導体(銅)で形成される配線の軌跡です。CADソフトウェアを使って部品同士を結ぶルートを決め、電気的な特性や信号品質などに関する制約やルールに従って行います。
例えば、インピーダンスマッチングやクロストーク防止が問題となり、ノイズの乗らない配線パターンを作成するにはノウハウと経験が必要です。
また、トランジスタやIC、抵抗などの発熱に対し、他の部品と距離が近いと悪い影響を及ぼすことがあります。そのため、部品間の距離を考慮し、必要ならヒートシンク設置などの対策が必要になります。
アートワークデータの出力
最後に、アートワークデータを出力します。アートワークデータとは、プリント基板の製造に必要な情報を含むデータファイルです。CADソフトウェアからプリント基板の図面や部品表などを出力し、プリント基板の製造に移行する流れとなります。
プリント基板設計で決めること
プリント基板設計では、以下の3つの要素を決定する必要があります。
- 仕様
- 部品配置
- 配線
仕様
仕様とは、プリント基板が満たすべき機能や性能、品質などの要件です。プリント基板設計においては設計目的を明確化し、仕様に基づいて設計を行うことが求められます。目的や目標を明確にすることで、効率的かつ効果的な設計が可能になります。
- 組み込まれる製品やシステムとの整合性や互換性を確保する
- 規格や法規制などの外部要因を考慮する
- 機能や性能や品質などの内部要因を定量化する
フルハートジャパンでは、お客様のニーズに合わせた最適な設計を行い、高品質なプリント基板を提供しています。また、お客様がお持ちの図面からの受託設計も行っております。お気軽にお問い合わせください。
部品配置
部品配置とは、信号の流れに沿ってプリント基板上に電子部品をどのように配置するかを決めることです。部品間の距離や方向が配線のしやすさや信号品質に大きな影響を与えるため、次のような点に注意して部品を配置します。
- 高速信号やアナログ信号などの特性に応じて、部品のグループ分けや分離を行う
- 電源やグランドなどの共通信号をできるだけ近くに配置する
- 熱発生や放熱性能に応じて、部品の向きや間隔を調整する
配線
配線の長さや幅、層数は、インピーダンスやクロストークなどの要因に関係し、電気的な性能や製造コストに大きな影響を与えます。
そのため、配線を行う際には、以下の点に注意する必要があります。
- 設計ルールや製造規格に従って、配線の幅や間隔や層数を決める
- 高速信号やアナログ信号などの特性に応じて、配線の方向や長さや形状を最適化する
- 配線密度やバランスを考慮して、配線の経路や順序を決める
配線の高密度化や複雑化が進んでおり、設計者には技術力や知識、経験が求められます。
プリント基板設計の注意点
プリント基板設計には、以下のような注意点があります。
- 設計ルール
- 製造コスト
- 品質
設計ルール
プリント基板設計には、CADソフトを使って回路図やアートワークを作成しますが、その際には設計ルールを守る必要があります。設計ルールに違反するとプリント基板が正常に動作しない、製造できない、品質が低下するといった問題が発生します。
設計ルールには、以下のようなものがあります。
制約の種類 | 説明 |
物理的な制約 | 部品の配置や配線の幅や間隔などの物理的な制約 |
電気的な制約 | 電流や電圧、インピーダンス、ノイズ、クロストークなどの回路特性に関する制約 |
環境的な制約 | 温度、湿度、振動、衝撃、放射線などの外部条件に関する制約 |
これらの設計ルールは、CADソフトによって自動的にチェックされる場合もありますが、必ずしも完全ではないため、設計者自身が理解して適用することが重要です。
製造コスト
プリント基板設計においても、製品開発と同様に、製造コストを抑えることが求められます。製造コストは、プリント基板の価格や利益率に直接影響し最終製品の市場競争力にも関わるからです。
製造コストを抑えるためには、以下のような工夫が必要です。
- 基板サイズや層数を最小限にする
- 部品数や種類を減らす
- 標準的な部品やパターンを使う
- 製造工程や検査項目を減らす
- 製造業者と協力して最適な製造方法や条件を決める
これらの工夫は、プリント基板設計の初期段階から考慮します。後から変更すると時間や労力がかかるだけでなく、品質や性能に影響する恐れもあります。
品質
プリント基板設計の最終目標は、品質の高いプリント基板を作ることです。ここでいう品質とは、想定された用途や条件で正確に機能し、信頼性や耐久性が高く、安全であることを意味します。
- 設計ルールや仕様書を遵守する
- 設計レビューやシミュレーションを行う
- 試作品や試験品を作って実際に動作や性能を検証する
- 製造業者と連携して品質管理や品質保証を行う
- 問題が発生した場合は、原因を分析して改善策を講じる
プリント基板設計の最終目標は、品質の高いプリント基板を作ることです。ここでいう品質とは、想定された用途や条件で正確に機能し、信頼性や耐久性が高く、安全であることを意味します。
プリント基板設計に使うソフト・ツール
プリント基板設計には、CAD(Computer Aided Design)ソフトを使います。主なソフトウェアの例として、以下のものがあります。
CADソフトウェア | 特徴 |
KiCad | オープンソースで無料。回路図エディタやPCBレイアウトエディタを備える |
Altium Designer | 高機能で高品質。回路図エディタやPCBレイアウトエディタの他、3Dビューアや信号整合性解析などの高度な機能を提供 |
ソフトウェアにはそれぞれ特徴やメリットがあり、目的に合わせて選ぶことが大切です。
プリント基板設計の将来性
プリント基板設計は、以下の3つの要素により高度化が進むと考えられます。
要素 | 概要 | メリット |
高密度化 | 電子部品の小型化や多機能化に伴い、プリント基板も高密度化 | 回路の性能や信頼性の向上 |
複雑化 | 電子回路の機能や規模が増えることで、プリント基板も複雑化 | 回路の相互干渉やノイズなどの問題の解決 |
自動化 | CADの機能や性能が向上することで、プリント基板設計も自動化 | 設計時間やコストの削減 |
プリント基板設計は、高密度化、複雑化、自動化という3つの要素によって変化し、新たな課題やチャンスをもたらします。その結果、電子回路の性能や信頼性の向上、設計と製造の両方におけるコスト削減、設計プロセスの柔軟性とスピードの向上など、多くの利点を享受できるでしょう。
より複雑な回路の設計が可能になる基板の進化は、医療機器、航空宇宙、通信など様々な産業分野で進む革新的な技術開発を支えることでしょう。
プリント基板設計に関するFAQ
プリント基板設計に関するよくある質問とその回答を紹介します。
- PWBとPCBの違いは何ですか?
- プリント配線板と基板の違いは何ですか?
- 基板設計CADとは何ですか?
- 実装設計とは何ですか?
- アートワーク設計とは何ですか?
PWBとPCBの違いは何ですか?
PWBとPCBは共にプリント基板を指す略語ですが、基板上の電子部品の有無で使い分けられています。
要素 | PWB | PCB |
意味 | Printed Wiring Board | Printed Circuit Board |
定義 | 配線のみで電子部品が実装されていないもの | 電子部品が実装され全体として機能する状態になったもの |
このように、「PWB」と「PCB」は、共にプリント基板を指す略語ですが、若干の違いがあります。
プリント配線板と基板の違いは何ですか?
プリント配線板と基板は、同じものを指す場合が多いですが、厳密に言えば異なる概念です。プリント配線板は、前述したPWBのことで、基板上にパターンを印刷して配線を形成したものです。
基板は、電子部品を取り付けるための土台であり、材質や形状によって様々な種類があります。例えば、FR-4やCEM-3などのガラスエポキシ樹脂製のものや、アルミニウムや銅などの金属製のものがあります。
基板設計CADとは何ですか?
基板設計CADとは、プリント基板の設計を行うためのコンピューター支援設計(Computer Aided Design)のソフトウェアのことです。
基板設計CADを使うと、回路図や配線図、部品配置図などの設計図を作成したり、基板のサイズや形状、レイヤー数やパターン幅などの設計条件を設定したり、部品の自動配置や配線の自動経路探索などの機能を利用したりできます。
実装設計とは何ですか?
実装設計とは、プリント基板に部品を配置し、配線を行う作業のことです。実装設計では、回路図や部品リストなどのデータをもとに、CADソフトウェアを使って部品の位置やパターンの形状を決めます。
実装設計の目的は、回路の機能や性能を満たすとともに、製造や組立のしやすさや信頼性を高めることです。
アートワーク設計とは何ですか?
アートワーク設計とは、プリント基板のパターンや穴などの図面を作成する作業のことです。アートワーク設計では、実装設計で決めた部品の配置や配線をもとに、CADソフトウェアを使って基板上にパターンや穴を描きます。
まとめ
プリント基板設計は、高密度化、複雑化、自動化の3つの要素によって変化しています。適切な設計によって、電子回路の性能や信頼性の向上、設計と製造の両方におけるコスト削減、設計プロセスの柔軟性とスピードの向上など、多くの利点を享受できます。
プリント基板設計においては、設計ルールや仕様に従い、製造コストを抑え、品質を向上させることが重要です。フルハートジャパンでは、お客様のニーズに合わせた最適な設計を行い、高品質なプリント基板を提供しています。お客様がお持ちの図面からの受託設計も行っております。
お客様の困りごとに対し、フルハートジャパンはノウハウと経験でサポートさせていただきます。多数の部品を実装する複雑な基板が動作せずお困りのお客様から御相談をいただき、フルハートジャパンにて回路を見直したところ一発で動作した、という例もございます。どんなプリント基板の設計にも柔軟に対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。